日本植物病理学会報
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タイのゴマフィロディーファイトプラズマのDNAの検出
中島 一雄林 隆治Witcha CHALEEPROMPorntip WONGKAEWPisan SIRITHORN
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1995 年 61 巻 6 号 p. 519-528

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抄録

ファイトプラズマにより引き起こされるゴマフィロディー(SP)は,熱帯の多くの国で発生している。タイで発生していたフィロディー症状のゴマ植物体からDNAを抽出した。本DNAから,bisbenzimide-CsCl平衡密度勾配遠心によって,罹病植物に特異的なDNAを精製した。これを制限酵素HindIIIで切断後,プラスミド-大腸菌の系にクローニングした。得られた組み換えプラスミドの中から,パーオキシダーゼで標識した罹病ゴマ植物のDNAと反応し,健全ゴマ植物のDNAと反応しないものを選択した。サザンハイブリダイゼーションにより,組換えプラスミドの挿入DNAには,ファイトプラズマの染色体DNAに由来する断片以外に,少なくとも2種類の染色体外DNAに由来する断片があることが明らかになった。SPファイトプラズマのクローン化染色体,染色体外DNA断片をプローブとして用いたハイブリダイゼーションや,PCRによるファイトプラズマ16S rDNAの増幅は,野外においてSPファイトプラズマを検出する場合に有効であった。クローン化したDNAプローブは,SP罹病試料と強く反応したが,ほとんどのDNAプローブは,イネ黄萎病,サトウキビ白葉病,リンドウてんぐ巣病,ツワブキてんぐ巣病試料とも弱いながらも反応した。東北タイで見出されたいくつかのファイトプラズマ感染試料を用い,ドットハイブリダイゼーションの反応の傾向ならびにファイトプラズマ16S rDNAの制限酵素切断パターンを比較した結果,SPファイトプラズマは,サトウキビ白葉病ファイトプラズマや他の白葉症状の植物で発生しているファイトプラズマよりも,フィロディーやてんぐ巣症状の植物で発生しているファイトプラズマに近縁であることが示された。

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