抄録
圃場において,イネもみ枯細菌病菌懸濁液を出穂期28∼31日前の3品種のイネに噴霧接種し,接種後8∼11日に最上位葉鞘を,また同21∼27日に止葉葉鞘を採取し,S-PG選択培地を使用することにより葉鞘ごとの病原細菌の検出頻度を調べた。その結果,最上位の葉鞘からの本病原細菌の検出頻度は節間伸長後に顕著に低下するのが認められた。また,葉鞘ごとの病原細菌量は,対数正規性を示したことから,最上位葉鞘における本菌量は葉鞘ごとの細菌量を調べることにより,比較的正確に推定できることが示唆された。次に,接種時期を変えた圃場において,止葉葉鞘での本病原細菌保菌頻度(FFP)と発病との関係を調べた。その結果,FFPと出穂期1週間後の発病度との間には高い正の相関(=0.78)が得られたが,同2, 3週間後では相関は認められなかった。これらの結果から,止葉葉鞘上の病原菌が圃場での本病の初期発生に重要な役割を果たしていること,および止葉葉鞘保菌頻度が本病の発生を予測するための一つの有効な手段となることを示唆していると結論した。