日本植物病理学会報
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イネいもち病菌の葉鞘裏面組織への感染におよぼすイネいもち病菌の2毒素と1誘導体の影響
生井 恒雄貫名 学富樫 二郎
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1996 年 62 巻 2 号 p. 114-118

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抄録
いもち病菌の病原性因子探索のための一連の実験として,イネいもち病菌の感染におよぼす本菌の2種の毒素,テヌアゾン酸,ピリキュロールとその関連化合物の影響を調べるとともに,胞子発芽液からそれら化合物の検出を試みた。イネ品種愛知旭(Pi-a)を用い,8葉期の葉鞘裏面組織をカミソリで剥離し,得られた組織を数段階の濃度に調整した供試化合物の懸濁液で2時間前処理した。処理終了後,供試組織をよく水洗し非親和性レースの菌株(TH67-22v,レース031)の胞子懸濁液を塗布接種して,40時間目に侵入菌糸の伸展度を比較した。その結果,いずれの供試化合物においても20μg/ml以上の濃度で前処理した組織では,本病菌の罹病度ランクが対照区のそれに比べて高くなる傾向が認められ,これら化合物が本病菌の感染に対して罹病性誘導活性を持つことが明らかとなった。活性は供試化合物のうちピリキュロールが最も高く,逆にジヒドロピリキュロールは弱かった。供試菌株の胞子発芽液からはジヒドロピリキュロールが検出されたが,他の化合物は検出されなかった。
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