日本植物病理学会報
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マツ材線虫病におけるクロマツの水分状態と木部水分通導機能の低下・停止
池田 武文
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1996 年 62 巻 6 号 p. 554-558

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抄録
マツノザイセンチュウを接種したクロマツにおけるマツ材線虫病の病徴の進展は,針葉の木部圧ポテンシャルから判断したクロマツの水分状態の変化から,二段階に分かれた。第一段階ではクロマツの水分状態はほとんど変化しないが,第二段階になると水分状態は急激に低下して枯死にいたる。木部仮道管でおこるアコースティック・エミッションの頻度からキャビテーションの発生頻度を評価したところ,第一段階の後半に低い頻度でキャビテーションが発生しはじめた。この時おこるキャビテーションは線虫接種前から第一段階前半にかけておこるキャビテーションとは異なり,同じ木部圧ポテンシャルに対する発生頻度が多かった。キャビテーションの発生頻度は仮道管中の水柱にかかる張力が強いほど多くなるので,第一段階後半になると,それ以前より同じ張力でもキャビテーションがおこりやすくなっていることを表わしている。第二段階になると一時期に集中して高い頻度でキャビテーションが発生して“runaway embolism”がおこることにより,木部の水分通導機能が一気に失われた。
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