モモ果実の表面に褐色∼黒褐色の斑点状,斑紋状を呈する病害が発生した。罹病果実から分離された菌のPSA培地上における菌叢は灰色∼黒褐色であった。素寒天培地上における形態は,菌糸は無色∼淡黄褐色,薄膜,表面は微細いぼ状,径1∼2.5μmであり,菌叢上に水滴を形成した。分生子柄は通常単生,真直か稀に屈曲,平滑,淡褐色,28∼120×2.5∼3.1(平均53×2.8)μmであった。分生子は単生または鎖生,0∼5隔壁,狭微卵形∼円筒形,薄膜,表面は微細いぼ状,淡黄褐色,5∼55×1.9∼3.1(平均25×2.5)μmで,出芽的に形成された。これらの形態的特徴により,本菌は
Stenella属菌と考えられた。ほ場でモモ幼果に本菌を接種すると,自然発病と同様の症状が再現され,当該菌が再分離された。本菌によるモモの病害は我が国では未記載であるので,病名としてモモすすかび病(fruit mold)を提唱する。なお,本病の病徴は果実の成熟にともない顕著となった。
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