抄録
日本産イネいもち病菌のDNAフィンガープリント解析とパルスフィールドゲル電気泳動法による特徴付けを行った。7種の日本判別菌系と1974年以降に各地で分離された,様々なレースの17株の圃場分離株を解析に用いた。MGR586とpMG6015をDNAフィンガープリント解析のプローブとして用いた。系統樹は, UPGMA法により作成した。ブートストラップ解析により, 2種のプローブによるDNAフィンガープリントに基づく系統樹が,いもち病菌系統の判定に適当であることおよびpMG6015の有用性が示された。系統学的解析の結果,すべての菌株は5種の系統(JBLA-INA, JBLA-K04, JBLB-K33, JBLB-HK1, JBLC-P2B)に分けられた。このうち, JBLA-INA, JBLA-K04およびJBLB-K33は複数の菌株よりなっていた。ことに,系統JBLA-K04には,すべての圃場分離株が属しており,同一系統内でのレースの分化が見られた。電気泳動核型解析により,いもち病菌の核型が同一系統内でも多様であり,同じレースの菌株ごとに特徴があることが示された。以上の結果により,現在の圃場におけるいもち病菌の大部分が,JBLA-K04に属し,多様にレースを分化させていること,レース分化に,染色体長の変化が関与している可能性が示された。