抄録
植物関連細菌が持つ原核型iaa遺伝子の役割を調べるために,オリーブこぶ病菌(Pseudomonas syringae pv. savastanoi)のiaaオペロンを広宿主範囲ベクターpRK415に導入した組み換え体プラスミドpTOY1を構築し,これを根頭癌腫病菌(Agrobacterium tumefaciens A208)に導入した。A. t. A208は感染した植物細胞でのみIAAを生産するのに対し,組み換え体A. t. A208 (pTOY1)はそれとともに恒常的にIAAを生産する.組み換え体A. t. A208(pTOY1)を接種したトマト茎にはA. t. A208に比べて大きなクラウンゴールが形成され,さらにポテトディスクでもカルス誘導が促進された。一方,A. t. A208あるいはA. t. A208 (pTOY1)をポテトディスクに接種した後,植物防御応答に関連するphenylalanine ammonia-lyaseの酵素活性を経時的に調べると,A. t. A208よりもA. t. A208 (pTOY1)接種でポテトのPAL活性が低下した。したがって, A. t. A208 (pTOY1)の強病原性は, A. t. A208 (pTOY1)によって生産されたIAAによって感染現場で植物防御応答が抑制された結果であると考えられた。