日本植物病理学会報
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Cucumis figareiならびにC. meloにおけるキュウリモザイクウイルスの複製と移行の比較
斎賀 睦幸藤原 正幸斉藤 宏昌大木 理尾崎 武司
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1998 年 64 巻 4 号 p. 255-263

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抄録
キュウリモザイクウイルス(CMV)の複製と移行を,CMV抵抗性のC. figarei (CF)とCMV罹病性のメロン(品種Earl's Favourite: EF)について比較した。CMV 1.0μg/mlを接種したEF植物は容易に感染して全身病徴を現したが,CF植物はCMV粒子0.5mg/mlまたはCMV RNA 50μg/mlの接種で感染が起こり,接種葉での局部感染にとどまった。共焦点レーザー顕微鏡で観察したCF接種葉内の感染細胞の分布はきわめて限定的で,時間が経過しても拡大しなかった。CF接種葉から得たプロトプラスト中の感染細胞数はEFに比べるとかなり低かった。また,ELISA法,ウェスタン法で検出されるCF接種葉内のCMV抗原濃度はEFの約1/10であった。さらに,CF接種葉中のウイルスRNAの蓄積をノーザン法で調べたところ,CFでも+鎖,-鎖の両鎖が認められたが,RNA1, 2の複製量はEFの1/500∼1/1000に,またRNA3, 4の複製量はEFの1/100に抑制されていた。一方,CF葉から調製したプロトプラストにCMVあるいはCMV RNAを接種すると,EFプロトプラストと同程度に感染した。CMV RNA接種CFプロトプラストのCMV抗原量をELISA法とウェスタン法で調べたところ,EFプロトプラストの場合と同様に増加した。また,接種プロトプラスト中のウイルスRNAの蓄積をノーザン法で調べたところ,CFでは+鎖,-鎖ともRNA3, 4の複製量にはEFと差はなかったが,RNA1, 2の複製量はEFの5分の1に抑制されていた。なお,CF感染葉から回収したCMVの病徴発現,抗原性,感染性,接種植物内の抗原濃度ならびに粒子中のRNA組成は,元のCMVと同様であった。以上の結果から,CFにおけるCMV抵抗性は,部分的にはウイルス複製の阻害が関係するものの,主として細胞間ならびに長距離におけるウイルス移行阻害に起因すると考えられる。
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