日本植物病理学会報
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ハクサイ葉上の軟腐病菌の感染源としての役割
S.M. Khorshed ALAM富樫 二郎生井 恒雄上田 幸史
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1998 年 64 巻 6 号 p. 546-551

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抄録
リファンピシン耐性の野菜類軟腐病菌Erwinia carotovora subsp. carotovora (RRS)をマーカーとして,ハクサイ葉上に生存している軟腐病菌の感染源としての役割を調べた。1997年4月30日および8月5日に山形大学農学部附属農場のハクサイ連作ほ場にハクサイ(松島交配W1116)を播種した。供試のリファンピシン耐性軟腐病菌を100mlのブイヨン培地で25°C, 24時間振とう培養後,遠心洗浄し,106cfu/mlの濃度の殺菌水懸濁液を作製した。この懸濁液を播種後20, 33, 47および60日のハクサイ葉上に株あたり2ml散布した。他方,懸濁液の菌濃度を108, 106, 104, 102および100cfu/mlのオーダーに調整し,播種後45日のハクサイ葉面に各濃度の懸濁液をそれぞれ株あたり2mlずつ散布した。ハクサイ葉面に散布した軟腐病菌は葉上で収穫期まで生存していたが,軟腐病は殺菌水を散布した対照区と同様に播種後50∼60日頃から発生した。被害程度は春播ハクサイの生育中期にリファンピシン耐性菌散布区で高い傾向を示したが,その他では差異がみられなかった。発病株の病斑および根圏からリファンピシン含有変法ドリガルスキー培地を用い希釈平板法により病原菌の分離を行ったところ,病原菌の散布時期や菌数に関係なく葉上に散布したリファンピシン耐性菌が病斑上と根圏から分離された。ほ場で軟腐病菌はハクサイ葉上から春播では播種76日後,夏播では33日後から組織1gあたり105∼106のレベルで検出された。これらのことから,軟腐病菌はハクサイの生育初期から葉上で腐生的に生存でき,本病の感染源の役割を持つことが明らかとなった。
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