ネパールの主要品種‘スンタラ’のカンキツグリーニング病の代表的病徴には退緑斑紋(I),葉脈が網目状に残る退緑黄化(II),主脈が緑色に残る退緑化(III),若葉の軽い退緑斑紋(IV),葉脈黄化(V),葉脈のコルク化(VI)と黄色斑紋(VII)があり,これらの葉各1枚からGOのDNAを検出した。本病の病原体GO (
Liberobacter sp.)のカトマンズ株(ネパール),ゴルカ株(ネパール)およびナコンパトム株(タイ)の16SリボソームDNA (rDNA)断片および16S/23S rDNAスペーサー領域の塩基配列を解析した結果,これらの配列は3分離株の間でまったく同じであり,16S/23S rDNAスペーサー領域にはtRNA
I1eとtRNA
A1aの遺伝子が存在した。そして,これらの配列は
L. asiaticumインド株,中国株と非常によく似ていることから,タイやネパールで発生しているGOは
L. asiaticumであると推定された。
L. asiaticumによる7種の病徴型のうちIII, V, VIは検出DNA量が多く,PCR診断に適すると思われる。これら7種の病徴の多くを同一樹上に観察することで肉眼診断の正確度が高まると思われる。また,病徴型III, V, VIIはアフリカのスイートオレンジにおける病徴記載とも一致しており,両カンキツに共通したグリーニング病病徴であると考えられる。
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