日本植物病理学会報
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日本におけるイネいもち病菌個体群構造のDNAフィンガープリント解析
Le Dinh DON草場 基章Alfredo S. URASHIMA土佐 幸雄中屋 敷均眞山 滋志
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1999 年 65 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

日本におけるイネいもち病菌の個体群構造を明らかにするため,MAGGYおよびMGR586を用いてDNAフィンガープリント解析を行った。1993∼1997年に採集・単胞子分離した278菌株(圃場菌株)および1976年に採集された22菌株(実験室保存菌株)を解析したところ,それぞれの菌株集団が70%レベルの相同性を有する2つのリネージ(Lineage)に分けられた。さらに圃場菌株における2つのリネージは実験室保存菌株における2つのリネージと1対1に対応した。以上の結果から,現在の日本におけるイネいもち病菌集団には2つのリネージ(JL1, JL2と仮称)が存在することが明らかとなった。JL1は圃場菌株および実験室保存菌株のそれぞれ97%および77%を占める主要なリネージで,日本全国に分布していた。一方,1960年以前に採集された集団は少なくとも5つのリネージよりなるとされているが,JL1, JL2はそのうちの2つに相当した。このことから,日本のイネいもち病菌集団の構造は1960年から1976年の間に大きく変化したことが示唆された。各リネージに属する菌系のイネ判別品種に対する病原性を調べたところ,リネージと病原性の間に関連は認められなかった。両プローブによるリネージ分類はほぼ同じであったことから,MAGGYはイネいもち病菌の個体群動態を解析するためのプローブとして有用と考えられる。

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