日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
水稲無病化種子「玄米種子」による種子伝染性病害の防除効果
内藤 秀樹根本 文宏山下 亨勝部 和則芦澤 武人丸山 清明有賀 武林 長生宮坂 篤園田 亮一藤 晋一古屋 廣光
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 68 巻 1 号 p. 28-35

詳細
抄録
現在,防除を要する水稲の主要病害は紋枯病を除いて,いもち病,ごま葉枯病,ばか苗病,もみ枯細菌病,苗立枯細菌病等種子伝染性病害が大部分を占める.これらの種子伝染性病害の根本的な防除を目的として無病種子の作成を試みた.通常種子として用いるもみでの種子伝染性病害病原菌の存在部位は主にもみ殻で,玄米はほぼ無病原菌であることから,玄米に保護膜として水溶性ポリアクリル樹脂と粉末活性炭で二重被膜した水稲の無病化種子“玄米種子”を開発した.本玄米種子を育苗箱で通常に育苗することにより育苗期の病害であるばか苗病,もみ枯細菌病,苗立枯細菌病,本田移植後ではいもち病が種子消毒剤による薬剤防除とほぼ同等に防除可能であることが明らかになった.本種子を用いることにより種子もみの長期間の種子浸漬や種子消毒の削除,種子消毒剤の廃液処理問題解消,本田期での種子伝染性病害防除作業の削減が可能となり,種子伝染性病害の根本的防除および,環境と人間に優しい農業確立に大きく貢献するものである.
著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top