日本植物病理学会報
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イネ種子玄米における侵入いもち病菌の動態と防除
早坂 剛松浦 孝幸生井 恒雄
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2002 年 68 巻 3 号 p. 297-304

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抄録

いもち病菌の種子感染から育苗中における発病までの動態と種子内部に寄生するいもち病菌の役割について検討した.保菌種子の2割が種子玄米部に感染しており,感染玄米では登熟後期まで枝梗から小穂軸を通過して本菌が侵入してくると推定された.登熟後期に感染した種子は,塩水選,種子消毒,その他種子予措中によって完全に感染種子の除去は困難であった.種子玄米に寄生するいもち病菌に対する種子消毒剤の殺菌効果は低く,特にステロール脱メチル化阻害剤(DMI)でその効果が劣った.種子消毒を行い籾表面に胞子形成が認められなくとも,玄米にいもち病菌が寄生している種子を播種すると,苗の立枯が生じ,立枯れ苗の葉鞘基部では分生胞子形成が多量認められた.このことは,種子消毒を行っても玄米に寄生するいもち病菌の残存により,苗いもちの重要な発生源となることを示している.これら種子玄米に侵入しているいもち病菌に対しては,真空浸漬法による種子消毒と温湯種子消毒が有効であった.

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