日本植物病理学会報
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稻熱病の病勢進行に及ぼす日光の影響に就きて
井村 純三
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1938 年 8 巻 1 号 p. 23-33

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抄録

1. 本論文に於いては稻熱病病斑の擴大,竝に培養基上に於ける同病病原菌の發育に及ぼす日光の影響に就き研究せる結果を記載せり。
2. 草丈約30cmの稻苗に常法により接種せる後,直ちに温室内に装置せる被覆せざる接種箱,その硝子面を白綿布1重, 2重或は黒羅紗紙にて被覆せる遮光箱中に納め,病斑の充分發達せる後,一定期間毎に一定本數の稻苗を刈取り,各病斑の長徑竝に短徑をコンパスにて測定比較せり。又エルレンマイエル三角罎に1%蔗糖加馬鈴薯煎汁寒天培養基を注入殺菌せるものの中央に稻熱病菌菌絲を移植し,一定時日毎にその發育せる菌叢の直徑を測定比較せり。
3. 潛伏期間直後に於ける病斑擴大度は,ある程度の弱遮光區に於いて最大にして,それよりも明るき區之に次ぎ,比較的暗き區に於いて最も劣れり。
4. 時日の經過と共に前記の關係に變化を來たし,病斑擴大度の最大なる區は次第に明るき區に移行し,遂には遮光度の強き區程病斑の擴大度不良となるに至れり。
5. 培養基上に於ける病原菌の發育は遮光程度に比例して,暗き區程良好なる傾向あるも,その差は大ならず。
6. 初期に於ける病斑擴大度に及ぼす日光の影響は,病原菌に對する日光の直接影響と,稻苗が輕度に衰弱せる場合に於いて病原菌の生育は却つて良好となることに基因せらるるものと推定し得べし。
7. 末期に於ける病斑擴大度に及ぼす日光の影響は,長期遮光による稻苗の同化作用の障害が,病原菌に對する榮養物質の缺乏を來たさしめ,ためにその發育の不良となりたる結果と認め得べし。

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