性格心理学研究
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意に反した行動をした後の態度及び感情状態の変化 : セルフ・モニタリングとの関連
水野 邦夫
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1994 年 2 巻 1 号 p. 38-46

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抄録
本研究は, Snyder &amp Tanke (1976)などの研究に基づいて, 意に反した行動をとった場合, セルフ・モニタリング(SM)の高い人(HSM)と低い人(LSM)の間で, 態度変容の仕方に違いがみられるかを調べるとともに, 感情面ではどのような変化が生じるかを検討することを目的とした. 実験は強制的承諾の実験パラダイムに則って行われ, 実験の直前と1週間後での態度の変化, 実験直後と1週間後での感情面の変化等が測定された. 分析の結果, 従来の報告通り, HSMは態度変容が生じないのに対し, LSMはとった行動の方向へ態度を変容させたことが示された. また, LSMは実験直後と1週間後では, 意に反した行動をとったことに対する不快感や憂鬱感などに変化がみられなかったのに対し, HSMではこれらの感情がより強く表明されたという結果も得られた. これについて, 1) HSMの態度一行動の一貫性の低さは彼らの感情面での安定性, 延いては精神的健康を阻害しているおそれが可能性として考えられるが, 2) その一方で, LSMがはじめに表明した感情的態度を変容させないことによって, 感情を強く抑え過ぎているとも考えられること, 3) HSMの自己呈示方略の一環としてネガティブな感情が実際以上に報告された可能性があること, などが考察された. また, SMを測定する2つの尺度間で, 結果に大きな隔たりがみられたことから, 尺度の妥当性の問題が論じられた.
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© 1994 日本パーソナリティ心理学会
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