抄録
本研究では研究Iで, 仮想場面における対人不安の高・低による着席行動の違いと相互作用の相手に対する印象形成について検討するために調査による検討を行った. ついで面接時における対人不安の高い者に対する印象の変容を検討した. 調査の結果, 対人不安の高い者は相手の正面を避けて斜め前を選択すること, 対人不安の低い者は相手の正面を選択することがわかった. また対人不安の高い者は, 相互作用する相手との距離が近いほど緊張した印象に身体方向の影響が現われることがわかった. それに対して対人不安の低い者は, 緊張した印象に身体方向の影響は現われなかった. 研究IIでは, 実際に対人不安の高い者と低い者が相互作用した結果, 90度の座席で行うと相互作用の初期には対人不安の高い者は緊張した印象であると評定された. しかしこの座席で相互作用を繰り返した結果, リラックスした印象に変化したのに対して, 斜め前の座席で相互作用を行っても印象の変化はみられなかった. これらの結果について, 臨床場面での応用の可能性ついて考察された.