心身医学
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有酸素運動が体力および精神状態に及ぼす長期的影響と短期的精神影響
牛島 一成志村 正子渡辺 裕晃山中 隆夫
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1998 年 38 巻 4 号 p. 259-266

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抄録

1994年度と1995年度に, 大学の公開講座として運動不足気味の一般市民向けに「体と心にエアロビクス教室」を実施し, その参加者(男性2名, 女性26名, 計28名)を対象に数種の有酸素運動を約2カ月間にわたって, 1回1.5時間程度, 週2回のペースで行って, 心身への長期的影響および短期的精神影響を検討した.長期的精神影響としては, SDSおよびSTAI-Tの著明な低下が認められた.1995年度のみ実施したCMIにおいても身体的自覚症および精神的自覚症の低下傾向, 精神的自覚症のうちの抑うつおよび不安項目群での低下傾向が認められた.これらより, 習慣的で長期的な有酸素運動の実施がメンタルヘルスを考えるうえで大変重要であると思われた.しかし, 性格・行動型である自己抑制傾向, 「いい子」度, タイプA傾向およびI型(情緒不安定内向)傾向には変化が認められなかった.基礎体力では, 2カ月の運動後に無酸素性作業能力のみが増加していた.運動種目ごとにSTAI-S, POMS, Nowiis気分評定表を用いて短期的精神影響を検討したところ, 愉快さ, 活動性, 社会的愛情および活力・積極性はいずれの運動種目でも増加する方向へと変化し, STAI-S, POMSのTMDおよび混乱・物おじはいずれも低下する方向へと変化していた.これらの結果は, メンタルヘルスを目的とした運動処方の可能性を示唆する.

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© 1998 一般社団法人 日本心身医学会
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