摂食障害患者における下剤乱用は,患者の予後を悪化させる重要な因子の1つである.下剤を乱用する患者の排便コントロールには治療者も苦労する.本研究では,新規作用機序をもつ下剤が治療にもたらす影響について後ろ向きに調査した.新規作用機序をもつ下剤の普及前(2016年7月~2017年6月)と普及後(2021年7月~2022年6月)において,下剤乱用患者数,入院前の下剤乱用量,退院時の医師による各下剤の処方量を比較した.入院患者数それぞれ165名と156名のうち,下剤乱用患者は33名と38名,自己申告による乱用量は63.5±80.0錠/日から34.5±81.0錠/日へと有意に減少した(p=0.002).退院時に刺激性下剤を処方された患者数はそれぞれ5名と2名であった.退院時に組み合わせて処方される下剤は1.9±1.2種類から3.6±2.3種類へと有意に増加した(p=0.001).新規作用機序をもつ下剤の承認販売により,摂食障害患者の入院前の下剤乱用量が減少し,入院後の薬物療法の選択肢が拡大する可能性が示唆された.
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