目的と方法:心身医学の初期には,精神力動的な理解に基づくアプローチは心身症の臨床に多大に貢献してきた.今回,精神療法専門クリニックである当院を受診した,蕁麻疹をはじめとする多数の心身症の既往がある症例と,慢性疼痛を主訴とした症例に対する力動的診断面接を経た力動的精神療法の経過と転帰を検討し,心身症の治療における力動的視点の有用性について再考した. 症例と考察:2症例とも心理社会的要因が身体症状に影響している可能性を受け入れ,精神療法導入に積極的であり,感情および心理社会的ストレス・心身相関への気づきが増して身体症状は軽減した.個々の精神力動を見極め,症状のつらさへの共感を含む支持的な介入を適切に導入しながら,感情に気づくことを援助しつつ,患者の心の準備状態に配慮して行う精神療法が有効であったと考えられた. 結語:力動的視点は心身症の患者の根本的改善に寄与する可能性が示唆された.
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