心身医学
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バセドウ病患者の自我状態と,抑うつ傾向,アレキシサイミア傾向,および治療予後との関連についての前向き検討
深尾 篤嗣高松 順太小牧 元呉 美枝槙野 茂樹小森 剛宮内 昭隈 寛二花房 俊昭
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2002 年 42 巻 10 号 p. 643-652

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抄録

バセドウ病甲状腺機能亢進症において,患者の自我状態と,抑うつ傾向,アレキシサイミア傾向,および治療予後との関連について前向き検討を行った.対象は73例の本症患者で,抗甲状腺剤治療開始後euthyroidになった時点で,TEG(東大式エゴグラム)によって調査したAが50パーセンタイル以上のhighA群(44例),50パーセンタイル未満のlowA群(29例)に分け,治療開始3年目までの予後およびSDSやTAS-20の得点との関連を調べた.次いでFCがACより高いFC優位群(40例)と,逆のAC優位群(33例)に分けた2群でも同様に検討した.寛解率はlowA群(10%)がhighA群(41%)より有意に(p=0.0048)低かった.また,AC優位群(18%)がFC優位群(40%)より有意に(p=0.0432)低かった.SDSおよびTAS-20総得点は,いずれもAC優位群のほうがFC優位群に比して有意に(p=0,0001,p<0.0005)高かった.TAS-20の因子1および因子2もまたAC優位群のほうがFC優位群に比して有意に(p=0.0022,P<0.0001)高かった.以上の結果より,合理的判断力や感情表出力が低い自我状態のバセドウ病患者では,抑うつ傾向やアレキシサイミア傾向とも相まって,甲状腺機能亢進症が難治化する心身相関の存在が示唆された.

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© 2002 一般社団法人 日本心身医学会
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