2002 年 42 巻 12 号 p. 781-791
本文は第43回日本心身医学会総会の会長講演として行った講演内容を心身医学誌に掲載するため,一部手直しをしてまとめたものである.前半部分の「私の軌跡」という項では,精神医学教室入局以後の臨床研究の軌跡に触れ,精神生理学的・認知的行動療法・心身医学・アルコール医療への個人的な関心と興味の変遷について述べさせていただいた.後半部分ではアルコール医療を展開するにあたって,かねがね一般臨床医の理解と協力をうることが最優先の課題と考えてきたので,生活習慣病の代表的疾患の一つとして,日常の業務そのものがEngelのいうbio-psycho-Socialなmedical modelの実施が不可避なアルコール医療について,基本的な概念のまとめやアルコール関連問題の現状,さらにアルコール依存症治療の概略について解説させていただいた.最後に健康施策「健康日本21」におけるアルコール問題についての具体的な努力目標を報告し,広く一般臨床医の協力を要請した.