心身医学
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心理・生理・行動面からみた摂食障害の慢性化要因
武井 美智子
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2004 年 44 巻 12 号 p. 911-918

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抄録

摂食障害(ED)の遷延化要因として, 以下の2点について検討した. (1)Egna Minnenav Barndoms Uoofostran(EMBU)を用いて, 摂食障害患者群(67例)と対照群(82例)に, 15歳時を回顧して養育体験を調査し, 比較検討した. ED群で両親とも, 「拒絶」は有意に高く, 「情緒的温かみ」は有意に低かった. また父親は「過保護」が「成績重視」, 「過干渉」ともに有意に低く, 母親は「ひいき」が有意に高かった. このことは, 親子間の情緒交流が不適切になり, 子どもが情緒抑圧的となって, 発病後の心理, 行動, 社会的発達が阻害され, 遷延化する可能性を示唆していた. (2)当科を受診した131例中, 病歴10年以上の遷延例は31例であった. 31例のサブタイプ別のBMI平均値はAN-R12.7, AN-BP13.4と低く, この2群では持続的に, またBN-P群では嘔吐などにより間歓的に, 半飢餓状態が惹起されていると考えられた. これら3群が遷延例の80%以上を占めており, これは, 半飢餓状態が神経内分泌との交互作用を介して, 遷延化因子の1つであることを示唆している.

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© 2004 一般社団法人 日本心身医学会
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