本研究の目的は,実験的な痛みや臨床的な痛みに対するディストラクションの効果を明らかにし,さらに痛みの強さや不安の強さがディストラクションの効果に及ぼす影響を明らかにすることであった.実験的な痛みおよび臨床的な痛みに対するディストラクションの効果をメタアナリシスによって検討したところ,どちらに対しても中程度の効果を示したものの,実験的な痛みに対するディストラクションの効果のほうが大きかった(実験的な痛み:d=0.65;臨床的な痛み:d=0.50).さらに,痛みの強さや不安の強さがディストラクションの効果に及ぼす影響を検討した結果,不安が強いほどディストラクションの効果が得られないことが示された.