心身医学
Online ISSN : 2189-5996
Print ISSN : 0385-0307
ISSN-L : 0385-0307
コラージュ制作における身体内言語の脳内メカニズム
近喰 ふじ子河野 貴美子吾郷 晋浩
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 48 巻 7 号 p. 659-669

詳細
抄録

今回,私たちはコラージュ制作における身体内言語のメカニズムを解明するために,脳波学的研究を行った.対象は青年期群(平均年齢21.1歳)と中高年期群(平均年齢59.6歳)とし,日本版POMS(Profile of Mood States)の改善群(以下,I群)を4因子以上に,非改善群(以下,II群)を3因子以下の2群に分類した.実験は(1)心理検査と(2)脳波実験を中心にし,後者には8課題を設定した.心理検査における青年期群のI群では,日本版POMSの2因子(T-A,C),東大式エゴグラム(TEG)の「A」,GHQ30の「不安と気分障害」が改善していたのに対し,II群ではGHQ30の「社会的活動障害」の増悪が認められた.中高年期群のI群では日本版POMSの5因子(T-A,D,A-H,F,C),GHQ30の「一般的疾患傾向」が改善していたのに対し,II群では改善も悪化もみられなかった.脳波では日本版POMSの改善因子数別に青年期群と中高年期群とを比較すると,幼少イメージと作品イメージとの間においては青年期群・中高年期群ともにI群ではp<0.05に,II群ではp<0.01に有意差が認められていた.また,左右後頭部のα波の平均振幅値(O2/O1)の比較からの検討では,青年期群は8課題のすべてにおいてもI群はII群に比べてO2/O1の値は小さく,右半球優位なイメージ思考型であることがわかった.一方,中高年期群は8課題のどれに対しても両群ともに左半球優位な言語的な脳内活動を示していた.以上,青年期群と中高年期群の脳内活動の相違を重要に考え,コラージュ制作に際しても異なった心理的アプローチの取り組み方が必要なのではないかと考えられた.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本心身医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top