心身医学
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うつ病発症感受性と養育環境(シンポジウム:脳科学による心身症の解明,2008年,第49回日本心身医学会総会(札幌))
森信 繁倉田 明子淵上 学松木 文土岐 茂山脇 成人
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2009 年 49 巻 4 号 p. 285-289

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抄録

多くの疫学研究成果から,幼少期の不遇な養育環境は成長後のうつ病発症感受性を増大させることが報告されているが,その脳内メカニズムはほとんど未解明である.このため産褥期うつ病モデルラットとその仔ラットを用いて,幼少期の不遇な環境がおよぼす,うつ病発症感受性亢進のメカニズム解明を行った.うつ病感受性の評価は学習性無力(LH)試験を用い,産褥期うつ病モデルは産後3〜4日目にLH試験を行ってLHとなった産褥期ラットである.養育行動は出産後2〜14日目まで,ビデオ録画を撮り計測した.産褥期LHラットの養育行動は,non-LHラットと比較して減少していた.仔ラット成長後のLH試験の結果,産褥期LHラットに養育された仔ラットはLHになりやすかった.Glucocorticoid受容体(GR)mRNA発現の解析から,産褥期うつ病モデルの仔ラット海馬ではGR発現が減少していた.これらの結果は,早期の養育行動の減少が,成長後のうつ病発症を促進させる可能性を示唆している.

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© 2009 一般社団法人 日本心身医学会
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