心身症とは,心理社会的ストレスにより,器質的病変あるいは機能的異常を呈する身体疾患である.その病態生理は自律神経・内分泌系を中心に研究されてきた.しかし,過敏性腸症候群を代表格とする心身症の脳機能を明らかにすることで,情動の形成機序をも明らかにしうる可能性が出てきている.内臓への侵害刺激は前帯状回,扁桃体,島などを活性化する.この中でも前帯状回と扁桃体の活性化は,それぞれうつと不安の病態で報告されているものであり,内臓痛と陰性情動が生成する共通の機序があるものと考えられる.われわれが情動と呼ぶ脳機能の大半は各感覚器官から入力された信号が脳内で処理され,嗅覚,視覚,聴覚,味覚,身体感覚の五感を統合することで成立する.身体感覚,特に,内臓感覚に代表される内的感覚(interoception)の重要性は今後さらに増すであろう.
抄録全体を表示