2010 年 50 巻 12 号 p. 1123-1129
失感情症はこれまで多くの心身症との関連が示されてきた.慢性の疼痛疾患との関連においても多くの研究がなされており,疼痛強度,有病割合,抑うつ,不安,疾病行動など各種疼痛関連指標との相関が報告されている.しかし,現在のところ因果関係やメカニズムについては不明な点が多い.失感情症は情動め認知的処理の問題から情動調整不全をきたすと考えられており,その結果,生理,認知,行動,社会的側面に影響を及ぼし,身体疾患や,社会的痛みを含む慢性疼痛の症状に影響すると推測されている.本稿では,これまでの失感情症と情動調整や,疼痛との関連を検討した研究を概観しながら,失感情症を抱える慢性疼痛患者への対応につき考察した.