2010 年 50 巻 2 号 p. 125-135
糖尿病患者の食行動のセルフコントロールに関与していると考えられる要因を,患者の内的,外的側面から多元的にとらえ,セルフコントロール状態を予測する調査票を作成した. I:問題解決を適切に行う判断力,持続力, II:不安のコントロールやストレスへの対処, III:外的状況のもたらす誘惑に対する統制の有無, IV:食事のセルフコントロールに対する動機づけ, V:対人場面において相手を優先し自分の問題をないがしろにする傾向, VI:援助資源の有無の6因子から構成されている.構成概念妥当性は,患者を血糖コントロール状態によって良好〜不良の4群に分類し,調査票合計得点と臨床像とを比較検討した.その結果,不良群には他の3群とは異なった固有のパーソナリティ傾向が存在する可能性が示された.また患者の自我の安定度を見極めることが,糖尿病治療におけるセルフコントロールの良否を予測する手がかりとなることが示唆された.