心身医学
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自己誘発性嘔吐を伴う摂食障害患者の歯科的問題 : う蝕経験歯数,受診動機
大津 光寛羽村 章石川 結子山岡 昌之一條 智康石井 隆資岡田 智雄苅部 洋行佐藤 田鶴子
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2011 年 51 巻 4 号 p. 329-335

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抄録

自己誘発性嘔吐を伴う摂食障害(eating disorder:ED)患者は多くの歯科的問題を抱えているが,それについて歯科,医科双方の理解はいまだ十分とは言い難い.そこでこれらの問題の一端を明らかにするため,自己誘発性嘔吐を伴う摂食障害症例23例のう蝕経験歯数(DMFT)と受診動機の調査を行った.結果として,DMFTはED群において有意に高かったが,有意差のあったものは未処置歯数のみであった.また下顎前歯以外のすべての部位で有意差が認められた.受診動機では73.9%が過去の歯科医療に対する不信不安感から受診していた.これはED群の嘔吐や生活習慣などがう蝕発生に関与していると考えられた.しかし,元来う蝕の少ない下顎前歯部で,う蝕経験が少なく有意差も認めなかったことは,効果的な予防法確立の可能性を示唆している.また歯科受診経験にもかかわらず,う蝕の続発を示しており,要因として摂食障害特有の歯科的リスクに対する配慮不足や,歯科に対する不安不信感が考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本心身医学会
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