心身医学
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漢方薬と認知療法の併用により改善した適応障害の1例
森下 克也高橋 歩美
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2011 年 51 巻 9 号 p. 831-837

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抄録

職場のストレスによる適応障害の1例に対して,漢方薬と認知療法を適用し良好な結果を得た.患者は27歳,女性.低い自己評価と抑え込まれた自己主張との間に葛藤が存在するというスキーマの上に仕事の負荷の増大が加わり,ストレス耐性が破綻し多彩な身体・心理的症状を呈した.治療は,生活の質を落としている身体・心理的症状に対して漢方薬を,その原因となっている非機能的思考に対して認知療法を適用した.その結果,約10ヵ月で症状が全快し,過剰適応的,主観的なストレス・コーピングが自律的,客観的なそれへと変容した.心身一如を旨とする漢方薬は,多彩な身体・心理的症状に対して西洋薬よりも合目的的であり使用薬剤を最小限に抑えることができる.また,認知療法は,薬物療法では困難な,歪んだ認知の修正に対して有効である.両者の併用は,安定的な適応障害の改善に効果的であった.

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© 2011 一般社団法人 日本心身医学会
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