2012 年 52 巻 10 号 p. 945-954
本稿では,肥満症患者への心理臨床学的アプローチについて筆者らの取り組みをまとめ,若干の考察を行った.実践を通じた検討から,肥満症患者への心理臨床学的アプローチは,多職種スタッフと連携しながら,内科的な治療に加えて,患者との共同作業としてすすめていくことが大切だと考えられた.特に患者が,複合的な心理的困難さを抱えている場合,抑うつ状態やストレス状態を有する場合,青年期の場合には,心理臨床学的アプローチをすすめることを考慮する必要があると考えられた.アプローチにあたっては,まず,患者の抱える心理的困難さについて理解することが大切であった.そして,個別の心理療法,グループ療法,心理教育といった支援を,患者や医療スタッフのニーズを踏まえたうえで行うことが望ましいと考えられた.このような医療現場での心理臨床学的アプローチに加えて,学校教育現場において,肥満予防も視野に入れた心身の健康を育む包括的な心理教育をすすめることも必要だと考えられた.