心身医学
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ヒトはなぜヒトになったか? : 共同作業と文化,言語(2011年,第52回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜))
長谷川 眞理子
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2012 年 52 巻 3 号 p. 185-192

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抄録

ヒトに最も近縁な生物はチンパンジーである.ヒトとチンパンジーはおよそ600万年前に分岐した.その後,チンパンジーは熱帯林の生活にとどまっているが,ヒトは世界中に拡散し,高度な文明を築いている.それは,ヒトが文化をもち,それを継承,発展させることができるからだ.では,このような文化をもつための生物学的な基盤は何だろう?それは,他者の心を推測する「心の理論」の機能,さらに,その根底にある,三項表象の理解である.個人が何かを考えるだけではなく,互いに他者の心を推測し,外界に対する心象を共有することができて初めて,目的を共有し,共同作業が可能になる.言語は,それを円滑にする手段である.ヒトの子どもは離乳してもすぐに独力で食物を得ることはできない.ヒトは生業活動で共同作業が必須なばかりでなく,子育ても協力して行う共同繁殖の生物である.他者の心を理解する協力的知能こそ,ヒトに固有の能力である.

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© 2012 一般社団法人 日本心身医学会
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