摂食障害の病態はいまだ完全に解明されておらず,難治性疾患の一つになっている.他の,特に器質的疾患に比べ,適当な疾患動物モデルが存在せず,動物実験の結果がそのままヒトに外挿できないことが,摂食障害の病態の解明,治療法の開発における研究にとって大きな障害となっている.摂食障害の病態は,現在のところ,環境,遺伝的要因を背景にし,個体レベルにおいては,(1)上位中枢における認知,(2)視床下部におけるペプチドを中心とした摂食調節,(3)摂食調節ペプチド受容体の感受性,(4)末梢からの摂食調節シグナルの伝達経路,(5)末梢からのペプチドを中心とした摂食調節シグナルのレベル,などにおける異常が複合しているものと考えられる.これまでに,さまざまな摂食調節ペプチドの血中レベルの異常が,摂食障害において報告されている.本稿では,摂食障害の病態の解明,治療法の開発における末梢の摂食調節ペプチドに焦点を当てた研究について,特に神経性食欲不振症に関して,その現状と今後の可能性を提示する.
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