2012 年 52 巻 3 号 p. 215-220
近年,摂食障害患者に対しても脳機能画像研究が行われるようになってきた.われわれはPETによるヒスタミンH1受容体結合能評価を神経性食思不振症(AN)女性と健常男女に対して行った.女性は男性と比較して,両側眼窩前頭野,右側頭野,両側扁桃体,両側海馬においてH1受容体結合能が上昇していた.またANは健常女性と比較して右扁桃体と左レンズ核での結合能の上昇を認めた.これらの差がANの発症・病態に関連している可能性が考えられた.また,認知柔軟性課題のWisconsin Card Sorrting TestをANと健常女性に施行しfMRIで脳血流変化を計測した.ANはルール変更時に反応した脳活動が,比較・判断に関与する右腹外側前頭前野と,予測にかかわる両側海馬傍回で低下していた.脳機能画像研究の発展により,摂食障害の病態解明へ大きな前進がもたらされるものと期待される.