若年の心理士にとって高齢者臨床にはさまざまな難しさがある.緩和ケアにおける心理療法では傾聴,共感が重要視されるが,特に死に関する不安,抑うつは非常にデリケートな問題で,その漠然とした方法論は若年の心理士にとって必要であるが,不十分であるようにも感じている.本稿では,前半で高齢者緩和ケアにおける心理的問題とそのケアについて認知行動療法をベースにレビューし,後半において筆者が担当した症例を振り返り,当時個人的に悩み,学んだことをまとめ,若年の心理士がどのようにこの領域において貢献できるかを検討している.