抄録
認知症者のコミュニケーションの障害に焦点を当て,自験例をもとに,症状の神経心理学的分析と,結果に基づく支援の方向性を述べた.(1)コミュニケーションの基本的構成要素の評価結果に基づき,Alzheimer型認知症(以下,AD)のコミュニケーション障害を構音障害型,聴覚障害型,認知障害型,全体高型,全体低型の5つに類型化した.(2)認知障害型ADに実施した集団での包括的認知訓練において,介入前後のMini Mental State Examinationが1.4点向上し,donepezilの治験とほぼ同等あるいは一部上回る結果を得た.下位項目では見当識が改善し,日常生活でも変化を認めた.(3)聴覚障害型の中等度AD例に,症状分析に基づいた的確な聴取方法で個人回想法の一種であるメモリーブック作成して個人介入を行い,人生の知恵といえる言辞を引き出せた.認知症のコミュニケーション支援には,客観性の高い神経心理学的分析と,心情を主観的に取り扱い共感する,双方の態度を併せ持つことが重要である.