心身医学
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発達障害患者における身体化の三重構造
中村 晃士沖野 慎治小野 和哉中山 和彦
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2014 年 54 巻 12 号 p. 1105-1110

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抄録

不定愁訴に基づき身体科をいくつもかかる患者の中には,自閉症スペクトラム障害(ASD)と思われる一群がいる.こうしたASD患者の特徴をアスペルガー障害の男性症例を提示して考察した.まずASD患者は,基本的に身体過敏性をもち,さらにコミュニケーション障害を含む社会性の障害からくる不適応による症状の身体化,そしてそれを強固なものとする症状へのこだわりをもつ.筆者らはこれをASD患者の「身体化の三重構造」と呼ぶこととした.この「身体化の三重構造」のために,ASD患者の身体症状が遷延化しやすく,結果として身体科を不要に受診し続けやすい.こうした患者への対応では,患者と治療者の関係性を意識的,積極的に良好に保つこと,彼らの過敏性などの特性についての認識を共有すること,コミュニケーションの中であいまいな表現は極力避け,ときには断定的な表現を用いるなどの工夫が必要であることを指摘した.

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© 2014 一般社団法人 日本心身医学会
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