抄録
高齢社会の進展により心身医学領域の臨床場面においても高齢者のうつ病や認知症に遭遇する場面が増えている.高齢者のうつ病は,生命予後を悪化させる危険性や,適切に医療機関を受診していないことで遷延化する可能性がある.われわれは,うつ病高齢者を地域で把握し,その1年後の受療状況と予後を調査した.対象は疫学調査の参加者898名で,うつ尺度と医師面接とにより,大うつ病性障害の者13名が同定された.追跡調査参加者は12名で,1年前にすでに治療中であった者など3名を除いた9名のうち,7名は大うつ病性障害のままで,2名は大うつ病性障害部分寛解となっていた.1年前の受診勧奨により受診に至った者が1名いたが,アドヒアランスが不良で十分な改善が認められなかった.他の未治療の8名の1年予後は不良であった.専門医療機関受診の支援とともに,受診後に治療効果が上がるよう継続的な支援が重要と考えられた.