2016 年 56 巻 4 号 p. 328-332
ストレス関連疾患の発症や病態には環境要因と遺伝子が相互に関与し, ストレス時に生じる遺伝子発現調節の破綻もその一因となる. マイクロRNA (miRNA) は, 遺伝子発現の転写後調節を担う20~25塩基ほどの小さな非コードRNA分子であり, 生体が外部環境から受けるストレス刺激に応答し, 恒常性の維持に関与することが報告されている. マイクロRNAはさまざまな組織に特異的に発現し, 唾液や血液などの体液中に安定して存在することから, がんや組織障害などの新たな疾患バイオマーカーとして注目されている. 中枢神経系においても, 神経新生やシナプス可塑性に必要な遺伝子の発現調節機構にかかわっていることが報告されている. したがって, ストレス反応やうつ病・統合失調症などの精神疾患の病態にも関与することが十分に考えられる. 本稿では, 近年明らかになってきた, マイクロRNAの作用機序と臨床医学への応用について解説する.