東日本大震災の医療支援において留意すべき点がある. それは, 口数が少なく辛抱強い東北人の気質, 風習, 文化と関連があるかもしれない. 程度の差はあれ, 多くの被災者が経験した心的外傷や喪失体験は, その後の心身状態に大きな影響を及ぼす. その多くは自己治癒力により回復へと向かうが, 心的外傷, 死別の状況や二次的要因により遷延化, 重症化することもある. これらがうつ病やPTSDなど精神疾患に至ることも問題であるが, 震災関連ストレスにより多種多様な生理機能不全を生じて身体疾患を発症したり, 慢性疾患が増悪したりする被災者は相当数に上っているはずである. しかし, 抑制 (感情を抑圧するストレス対処) の傾向が強い東北の被災者の多くは, 被災による漠然とした体調不良には気がついても, 自らの感情や身体感覚に気づき難い心身症として表れていることが予測される. このような心身症の病態に多くの内科医や精神科医は気づきにくいであろう. 心身症の存在に気づき心身両面からアプローチを行うことがきわめて重要であることはいうまでもない. 東日本大震災復興への医療支援では, 心療内科医の活躍が期待される.