心身医学
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原著
チューイングによって多数歯の崩壊に至った摂食障害の1例
大津 光寛軍司 さおり苅部 洋行石川 結子若槻 聡子羽村 章
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2019 年 59 巻 6 号 p. 560-567

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抄録

緒言 : これまでの研究では摂食障害の歯科的合併症は過食嘔吐が最大の要因であるとされてきた. しかし今回チューイングのみでほぼ全歯が残根状態となった症例を経験した. 症例 : 26歳女性. 精神科診断名 : 心的外傷後ストレス障害, 強迫性障害, 神経性やせ症過食・排出型, 選択的セロトニン再取り込み阻害薬服薬中. 歯科既往 : チューイング開始直後から歯痛などが出現し近医受診, 入退院を繰り返すうちに近医での治療が困難と判断され当センター紹介受診. 当センター受診時にはほぼすべての歯が残根状態であり, 咬合は崩壊していたため, チューイング内容の改善やチューイング後の口腔衛生指導を中心に対応した. 考察 : 本症例は加糖飲料などのチューイングを繰り返すことで口腔内が酸性に保たれ, う蝕発生環境が長期保持されることが歯科的問題を発生させることを示唆している. また, 服用中のSSRIの副作用も疑われた. これらの症例に対しては症例に合わせた歯科対応が必要である. また重症化を防ぐためにも広範囲への啓発が重要である.

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© 2019 一般社団法人 日本心身医学会
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