心身医学
Online ISSN : 2189-5996
Print ISSN : 0385-0307
ISSN-L : 0385-0307
特集 心因性発熱,機能性高体温症の基礎と臨床アップデート
ストレス性体温上昇の神経機序
—感染性発熱との比較から—
中村 和弘
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 60 巻 3 号 p. 203-209

詳細
抄録

心理ストレスは脳の交感神経調節系に作用してさまざまな生理反応を生じさせる. 体温の上昇は顕著な生理反応の1つであり, 強い心理ストレスが心因性発熱と呼ばれる高体温症状を引き起こすこともある. こうしたストレス反応は基本的な生理反応だが, その中枢神経機序は研究途上である. ストレス性体温上昇とよく似た体温上昇である感染性発熱の神経回路機序と比較すると, どちらも視床下部背内側部から吻側延髄縫線核を介した交感神経駆動経路を通じて褐色脂肪熱産生が亢進することで生じる. しかし, 視床下部背内側部を興奮させる仕組みがストレス性体温上昇と感染性発熱とでは異なる. 感染性発熱は, 視索前野でのプロスタグランジンE2作用を介した神経伝達変化が視床下部背内側部を興奮させることで惹起される一方, ストレス性体温上昇は, 皮質辺縁系から視床下部背内側部へのストレス信号入力によって視床下部背内側部ニューロンが興奮することで惹起される.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本心身医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top