2020 年 60 巻 8 号 p. 682-687
心身医学の専門医は, 医学の前提である人の 「同一性」 を前提とすることを求められつつ, 個々のクライエントごとに事情が異なるという 「事例性」 にも重きを置くことが求められる. この矛盾に対応するために, 一般的な心身相関を考慮するのではなく, より効果的な心身医学の専門医だからこそできる 「セルフ・ナラティヴ」 によるアセスメントと, それぞれのクライエントの特性に合わせた 「セルフ・ナラティヴを活用した対応」 について述べた. そして, 心身医学の専門医としての立場が, 通常の医療者とは異なる矛盾を内包しているとともに, それこそが全人的援助の体現者としての存在になっていることを示した.