2021 年 61 巻 2 号 p. 133-138
ウェクスラー法知能検査は, 単に 「全検査IQ」 を測定することだけにとどまらない. 2018年に発売された日本版WAIS-Ⅳであれば, 10の基本検査を実施することで全検査IQ, 言語理解指標, 知覚推理指標, ワーキングメモリ指標, 処理速度指標の5つの合成得点が算出される. 知能検査は当初, 知的発達の遅れの有無を把握するために用いられてきたが, WAIS-Ⅳではそれら合成得点の数値から, 知能の構成要素を個人内差の観点から明らかにすることができるものへと発展した.
今日, さまざまな身体症状を訴える方々の中には, 知的能力のアンバランスさのために社会適応が困難になり, 二次的障害として身体疾患を呈するケースも見受けられる. そのような方々に対し, WAISの結果からその方の特性を知ることで, 適切な介入と無理のない課題設定, そして社会適応の方向性を提示することが可能となり, 身体症状の緩和と対処能力の底上げにつなげていくことができると考えられる.