症例は33歳, 女性. アレキシサイミアを伴う仮面うつ病であった. 二人の自分の概念を説明する際に, 口頭言語による聴覚的アプローチに二人の自分の概念図を用いた視覚的アプローチを加えることでこの概念の理解が深まった. WAIS-Ⅳ検査では全検査IQ (FSIQ) は平均であったが, 指標合成得点においては知覚推理指標 (PRI) とワーキングメモリー指標 (WMI), PRIと言語理解指標 (VCI) の間で有意差があった. PRIとWMIの差は臨床的に意義があると判断された. この指標レベルのディスクレパンシーは視覚的アプローチの有効性と関連している可能性がある. また, WMIの合成得点が相対的に低かった. レポートを書くことが有効であったことと何らかの関連がある可能性がある. 本症例はアレキシサイミアを伴う仮面うつ病患者の認知特性を明らかにすることが効果的な治療法を考えるうえで役に立つ可能性があることを示唆してくれた.