2021 年 61 巻 4 号 p. 335-340
過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) の発症および増悪にストレスが関与することはよく知られている. 心理的異常と比例してIBSが重症化するので, 重症度に応じた心理療法の適応が必要である. IBS診断治療ガイドラインでは, 第2段階で簡易精神療法, 第3段階で専門的な心理療法の施行を推奨している. 自律訓練法 (autogenic training : AT) は公式に受動的注意を払い, 自己催眠によって心身を副交感神経優位状態にしてホメオスタシスの均衡を図る, 体系化された心理生理的治療法である. IBSに対するATは, 消化管を支配する迷走神経の過剰な活動を抑制することが多い. また, 自己効力感の高まりや, 「よくなっている」 という感覚をもたらすことを脳画像からも説明可能である. より多くの練習が情動に関する皮質機能を活性化させていると考えられる. IBSに対するATのランダム化比較試験は催眠療法や認知行動療法と比較して論文数が少ない. 統一されたプロトコルを用いた研究が必要である.