2021 年 61 巻 6 号 p. 535-539
長期にわたり関わった1事例を通して,そこで実施した各種技法の統合的利用について考察した.アドラー心理学に基づくカウンセリングとサイコセラピーは対人関係調整に役立ち認知的変化も生じたが,内面での癒しが不足していた.ハタ・ヨーガは身体面への一義的効果にとどまった.ヨーガ療法は心身両面に効果を示したが,アプローチとして身体面と心理面での乖離がみられ,新たな「べき思考」が形成された.クリパル・ヨーガでは,より心理療法的効果が出たが,セラピストの技量の影響が大きいことが予測された.内面での光と闇の統合アプローチは身心魂の成長をもたらす結果となった.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で世界的に大混乱となっている時期であり,外側の状況に惑わされなくなるためにはこのような身心魂の成長を目指したアプローチが必要であり,今後はこれら各種技法の適用時期,適用基準の確立が課題といえる.