2022 年 62 巻 4 号 p. 307-313
がん診療の進歩は目覚ましく,がんゲノム医療が普及し,Precision Medicineが注目されるようになった.中でも分子標的薬や第4世代の免疫療法である免疫チェックポイント阻害剤などの新規抗がん薬の登場は,がん治療における新時代の幕開けをもたらした.従来であれば有効な治療法がなかった患者さんや,緩和医療を受けていた終末期の患者さんが,がんを克服する事例も増えてきている.
こういったがん治療の変化により,がん緩和医療を取り巻く環境も大きく変化した.従来の終末期への対応に加えて,がん薬物療法開始までのイントロダクションとしての役割や治療期のがん薬物療法と緩和医療の併用などへの対応も新たに求められるようになっている.今後,最新のがん診療をがん治療医と緩和医療医とで共有し,治療期に緩和医療医が併診することで,臨床現場での新世代のがん診療が構築されることが期待される.