心身医学
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特別企画:心身医学を志して30年間で,何ができて何ができなかったのか―平成初めに心療内科で研修を開始した医師の航跡
地域医療の中の心身医療
伊澤 敏
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2023 年 63 巻 2 号 p. 132-137

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抄録

筆者は1990~1991年の1年間,勤務していた佐久総合病院から派遣され,九州大学心療内科に研究生として在籍した.佐久総合病院は地域医療の実践で知られる病院である.自院に戻った後,心療内科と精神科の診療を担当し,病院の管理業務にも携わりながら今日に至る.

本稿では九州大学心療内科で学んだことを振り返り,佐久総合病院の地域医療のかたちを作った若月俊一の思想の一端を紹介したうえで地域医療,心身医療について私見を述べたい.筆者は医療とはすべからく心身医療であるべきと考えている.専門分化が進む中,心身両面を偏りなくみる心身医療の患者把握は本来すべての診療科の中に取り込まれるべきである.そして,地域医療は個人を取り巻く家族やその生活,地域社会も含む,さらに広い視野の中に患者をとらえている.時代の大きな転換期に臨み,われわれ医療者は疾病の診断・治療のために専門性を追求する一方で,広く社会的な視野の中に人間や疾病をとらえる目をもたなければならない.

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© 2023 一般社団法人 日本心身医学会
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