抄録
薬剤性腎障害の中で,漢方薬が原因とされている症例の報告は少ない。今回われわれはアトピー性皮膚炎の治療として漢方薬を服用中に,蛋白尿をきたした1例を経験した。諸検査から蛋白尿は主として尿細管障害によると思われ,漢方薬を中止することにより約1ヵ月の経過で蛋白尿は消失したことから,蛋白尿の原因として漢方薬による腎障害の可能性が示唆された。近年,漢方薬による腎障害についてChinese Herbs Nephropathyという新しい疾患概念として症例の報告がみられるようになったが,本邦での報告はまれであり,貴重な症例と思われた。
また,漢方薬を投与する際には副作用として腎障害も念頭におく必要があると思われる。