日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
急性腎炎症候群および高い組織活動性を呈しACE阻害剤が著効したIgA腎症の1男児例
奥川 敬祥冠木 直之早川 広史長谷川 聡堀田 広満広渡 愛笠原 多加幸富沢 修一内山 聖
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1997 年 10 巻 1 号 p. 68-72

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抄録
 肉眼的血尿,ネフローゼ症候群,高血圧を伴い,発症後4週目の腎生検組織像でびまん性管内増殖,硬化性病変,多数の糸球体で半月体形成を認めるなど,急性腎炎症候群を呈して急性発症したIgA腎症の11歳男児例を経験した。早期に抗凝固・ステロイド療法を導入したが,その後も高度の蛋白尿が持続した。しかし,Enaraprilの服用開始直後から著明な尿蛋白の減少効果を認め,さらに少量ステロイドパルス療法を追加して発症後4カ月目には完全に尿蛋白は消失した。
 本症例では,間質病変や血管硬化性病変などが形成される以前の早期に抗凝固・ステロイド療法を開始できたこと,さらにアンジオテンシン変換酵素阻害剤,ステロイド少量パルス療法などの併用が有効であったと考えられた。アンジオテンシン変換酵素阻害剤は,急性発症したIgA腎症症例の初期治療法として試みたい治療方法のひとつであると考えられた。
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© 1997 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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